近年では定年退職や子どもの独立をきっかけに、「この先の人生を自分らしく生きたい」と考えて離婚を選ぶ方もいます。
しかし、熟年離婚の際に忘れてはならないのが年金の問題です。
今回は、熟年離婚に伴う年金分割の仕組みや影響、そして見落とされがちなデメリットを解説いたします。
年金分割の仕組み
年金分割とは、婚姻期間中に夫婦のどちらかが加入していた厚生年金保険の標準報酬額を、離婚後に夫婦で分け合う制度です。
主に、専業主婦やパート勤務で厚生年金に加入していなかった配偶者が、将来受け取る年金額を確保するために設けられた仕組みです。
たとえば夫が会社員として働き、妻が専業主婦だった場合、通常であれば妻自身が老後に受け取れる年金は国民年金のみになります。
しかし年金分割を行うことで、夫の厚生年金の一部を自分の将来の年金として受け取れます。
年金分割の対象となるのは、厚生年金保険における「報酬比例部分」です。
国民年金や共済年金の基礎部分は分割の対象外になります。
熟年離婚が年金分割に与える影響
年金分割の対象は、婚姻期間中に加入していた厚生年金の報酬比例部分であるため、婚姻期間が長ければ長いほど分割の対象となる金額も大きくなります。
特に「夫が会社員または公務員、妻が専業主婦」または「妻の収入が夫より少ない共働き」
という家庭では、離婚後に妻の受け取る年金が増え、夫の年金額が減るという傾向が見られます。
ただし実際にどの程度の金額が増減するかは、ケースバイケースです。
分割後の見込み額は、事前に専門家にシミュレーションしてもらうのがおすすめです。
熟年離婚のデメリット
収入が多い側は、将来の年金額が減少するリスクがあるのがデメリットです。
年金分割の請求は法律上の権利として認められており、一方的に拒否することはできません。
退職後の生活資金を年金に頼っている場合には、大きな負担となるかもしれません。
また、制度が複雑なのも、熟年離婚で年金分割を行うデメリットです。
年金分割の手続きには、複数の書類準備や相手との合意、年金事務所での届出などが必要です。
「離婚成立後2年以内」という期限もあります。
手続きに不安がある場合は、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
まとめ
熟年離婚における年金分割は、老後の生活に直結する重要な手続きです。
離婚後の生活費・住まい・健康なども含めて、長期的な視点で判断する必要があります。
必要に応じて、離婚・相続に詳しい弁護士など、専門家への相談を早めに行いましょう。






